
尾張徳川家に伝来する貴重な刀剣や美術品の数々を収蔵する徳川美術館では、この秋に注目の展覧会が2つ開催。美術品を収納する「箱」に注目した特別展「ときめく箱」と、徳川美術館と蓬左文庫の創設者である尾張徳川家19代当主・徳川義親にフォーカスを当てた企画展「旅する侯爵 徳川義親」が、いずれも2026年10月8日(木)より始まります。
この記事では、徳川美術館ならではの視点で行われる特別展「ときめく箱」と企画展「旅する侯爵 徳川義親」の見どころをお届けします。
徳川美術館 特別展「ときめく箱」 の見どころ

特別展「ときめく箱」は、美術品を収納する「箱」に注目した展覧会。作品の裏方として重要な役割を担ってきた「箱」を主役として取り上げ、作品とともに護り伝えられてきた箱の機能と美しさ、そして文化財を未来へ伝える営みのなかで果たしてきた役割に改めて目を向ける、新しい試みとして開催されます。
「護る」「秘める」「伝える」―― 箱が担ってきた役割を紐解く

古代から現代にいたるまで、人々の生活や信仰・芸術に深く関わってきた「箱」。箱は、内容品の保護・整理・運搬といった実用的な役割だけでなく、箱そのものに精緻な装飾や象徴的な意匠、あるいは”箱書き”を施すことによって中身が特別なものであることを示すメディアとしての役割も担ってきました。
本展では、そうした美術品とともに大切に伝えられてきた「箱」が持つ多様な役割に着目。それぞれの箱に施された装飾などから、役割を紐解きます。重要文化財「脇指 無銘 貞宗 名物 物吉貞宗」 附属にする蠟色塗合口拵および刀袋・刀箱・拵箱もその一つ。尾張家の新当主が家臣を前にこの刀を実見し、継承したことを確認して再度封印する儀式を行う際に用いられる刀箱等に施された華麗で精緻な装飾に注目です。

(右)重要文化財 黒樂茶碗 銘 時雨 本阿弥光悦作 [外箱]桐製四方桟蓋箱 蓋裏
また、本展では、箱に記された「箱書」にも注目。本阿弥光悦作の重要文化財「黒樂茶碗 銘 時雨」を納める桐箱の蓋裏に書かれた箱書には、近代尾張の茶人・森川如春庵が16歳の頃に祖父に買ってもらったことが晩年に記されています。箱書を施すことによる、品物の由緒や伝来を後の時代に残す”記録メディア”としての役割にも注目です。
初公開となる”新発見の茶入”も登場 持ち主の美意識が映る、誂えの箱

(右)刷毛目茶碗 銘 白波 朝鮮王朝時代 16世紀 岡谷家寄贈 徳川美術館蔵
大切な品のために、形や素材、意匠に心をくだいて誂えられた箱には作品を守る工夫とともに、持ち主の好みや鑑識眼が表れています。とりわけ近代には箱そのものも鑑賞の対象となっており、中身とあわせて箱を見ることも一般化。そうしたことから、茶人たちは品物だけではなく、箱にも様々な思いをのせて誂えてきました。

(左)唐物丸壺茶入 銘 唐丸壺 個人蔵 [仕覆内箱] 桐製印籠蓋箱 蓋表 [茶入内箱] 杉製二方桟蓋箱 蓋表
中でも今回注目されるのが、本展で初公開となる「唐物丸壺茶入 銘 唐丸壺」。石州流の祖・片桐石州が持っていた新発見の茶入を納めていた箱の蓋表には片桐石州自筆の箱書が残されていました。中身とともに持ち主が誂えた箱をじっくりと観賞することで、品物が愛され、受け継がれてきた歴史に触れられます。
箱のかたちと変遷から、日本のものづくりの歩みを辿る

本展のもう一つの見どころが「箱の歴史」を辿る展示。箱の歴史は、植物の蔓や茎、皮などを編んだ先史時代の籠にまで遡り、日本では、弥生時代から古墳時代にかけての木棺や石棺に四角い箱の古い例が見られています。
平安時代以降は工具と技術の発達に伴い、木板を用いた箱が多様に展開。今日の日本で広く使われる桐箱は、大きな木材を縦に挽き割る大鋸(おが)や、表面を平らに仕上げる台鉋(だいかんな)の普及を背景に、16世紀頃に誕生しました。そうした箱は数々の美術品にも描かれており、「重要文化財 歌舞伎図巻 詞書 伝烏丸光広筆 二巻の内 下巻」にも、画面上に様々な形態の箱が描かれ、古くから箱が人々の暮らしにあふれていたことがわかります。箱の変遷を見れば、日本のものづくりの歩みを辿ることができます。
美術品を護り伝えてきた「箱」の美しさを再発見

そして特別展「ときめく箱」の最大の見どころは、何と言っても「箱」そのものが持つ美しさ。厳選された木材に、箱の職人による丁寧な仕事、あざやかな紐など、美麗な作品を収納してきた箱の細部一つ一つに込められている機能美・造形美も必見です。
徳川美術館 企画展「旅する侯爵 徳川義親」の見どころ

企画展「旅する侯爵 徳川義親」は、徳川美術館と蓬左文庫の創設者である尾張徳川家19代当主・徳川義親の「旅」に注目した展覧会。生誕140年・没後50年を迎えるにあたり、旅を愛した徳川義親が旅先で得た品々やこれまで公開する機会が少なかった資料を展示・紹介しています。
義親の「世界観」が詰まった玄関を再現

企画展「旅する侯爵 徳川義親」の最初の見どころは、徳川義親の世界観が凝縮された「東京・目白の本邸玄関」。尾張徳川家19代当主である徳川義親が建てた東京・目白の本邸玄関の様子が、当時の写真を元に再現されています。
当時の本邸玄関には、ステンドグラスや油彩画とともに、江戸時代以来尾張家に伝わる大筒、北海道の木彫り熊、アイヌ模様のカーペット、東南アジアの工芸品など、さまざまなものが陳列。一見すると脈絡なく見える品々が並んでいるようには見えますが、そうした空間から、分野や地域にとらわれず、旅先で出会ったものを自らの暮らしの中に取り込んでいった徳川義親の姿が浮かび上がります。
北海道土産の定番となった「木彫り熊」誕生のきっかけとなった義親のスイス土産

(左)八雲町指定文化財 這い熊 伊藤政雄作 大正13年(1924)頃 個人蔵
もう一つの見どころが、本邸玄関にも飾られている「木彫り熊」。昭和の時代には北海道土産の定番ともなった木彫り熊ですが、実は、そのルーツは、徳川義親がスイス旅行の際に土産として購入した「木彫り熊」にあります。
木彫り熊が盛んに作られていた北海道・八雲町は、もともと旧尾張藩士によって開拓された土地。そのため徳川義親もたびたび八雲町を訪れており、その際にスイスで買った木彫り熊を手本に、冬の農閑期の仕事として木彫り熊を制作することを提案しました。このことがきっかけとなって作られるようになった木彫り熊は、誰もが知る北海道を代表する工芸品として発展。本展では、手本となったスイスの木彫り熊と、八雲町における初期の木彫り熊が同時に展示され、義親の「旅」から新しい地域文化が生まれた頃の様子を伺うことできます。
船上で乗り合わせアインシュタインにノーベル賞受賞の報が届く

旅好きだった徳川義親は、妻の米子とともに約17ヶ国を巡るヨーロッパ旅行も行っています。その旅から帰国する途中の船上で出会ったのが、来日途中のアルベルト・アインシュタイン。日本までの航海の途中でノーベル賞受賞の報が届き、徳川義親も船上で新聞記者の取材に応じたそうです。船上で生まれた思いがけない出会いを伝える写真も、企画展「旅する侯爵 徳川義親」で見ることができます。
義親のカメラがとらえた写真と映像から、100年前の世界を紐解く

旅先で数多くの写真を撮影し、動画も残してきた徳川義親。訪れた街の風景、建物、博物館や美術品、現地の人々、そして旅の途中で出会ったさまざまなものが写真や動画として写されてきました。企画展「旅する侯爵 徳川義親」では、徳川義親が撮影した写真を数多く展示するとともに、旅の途中で記した紀行文「西に旅して」なども通して100年前の旅の様子を紹介。蓬左文庫ロビーでは、義親が撮影した東南アジアの旅のモノクロ映像もダイジェスト版として公開されます。
美術品を収納する「箱」に注目した特別展「ときめく箱」と、徳川美術館と蓬左文庫の創設者である尾張徳川家19代当主・徳川義親にフォーカスを当てた企画展「旅する侯爵 徳川義親」。徳川美術館ならではの魅力が詰まった2つの展覧会に足を運べば、また一つ新しい世界に触れることができるでしょう。
■徳川美術館 特別展「ときめく箱」・企画展「旅する侯爵 徳川義親」 開催概要
会期
特別展「ときめく箱」 2026年10月8日(木)~11月15日(日)
企画展「旅する侯爵 徳川義親」 2026年10月8日(木)~12月13日(日)開館時間
10:00~17:00(最終入館16:30)休館日
毎週月曜日
※但し祝日となる10月12日(月)、11月23日(月)は開館
※祝日開館の翌日となる10月13日(火)、11/24(火)は休館会場
徳川美術館・名古屋市蓬左文庫
JR中央本線「大曽根」駅から徒歩10分程度
基幹2系統「徳川園新出来」バス停から徒歩3分程度
名古屋観光ルートバスメーグル「徳川園・徳川美術館・蓬左文庫」バス停下車徒歩すぐ入館料
一般2,000円、高校生・大学生1,200円、中学生以下無料
徳川美術館に行くには
徳川美術館は、地下鉄名城線・JR中央線・名鉄瀬戸線・ゆとりーとライン『大曽根』駅から徒歩10分程度。基幹バス2系統や名古屋観光ルートバス「メーグル」の利用も便利です。
この記事は、徳川美術館から発信された以下の公式プレスリリースに基づいて作成しました。
・美術品を収納する「箱」に注目、特別展「ときめく箱」開催
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000126379.html・企画展「旅する侯爵 徳川義親」開催。見て、撮って、集めて、持ち帰った――徳川義親の「旅」をたどる
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000126379.html


